/森羅万象学校 /2006-07-25/

Habitable Planet の形成と進化 (6):
惑星気候学

阿部 豊(東大・理)
2006 年 7 月 27 日
タイトルぺージ


表層環境を決めるもの


従来の理解の問題点


氷期間氷期変動


軌道要素の変動
  • 軌道傾斜角
  • 近日点の位置
  • 離心率


6.1 表面の不均一
  • 陸惑星と水惑星


局所的に水が存在する系
  • 水は Habitable Zone の両側の境界を決めている物質


水惑星と陸惑星
  • 水惑星: 降水と蒸発は局所的にはバランスしない
    • 図は地球の年平均降水量と蒸発量, 水蒸気輸送
  • 陸惑星: 降水と蒸発は局所的にバランス


陸惑星とは
  • タイタンも陸惑星のようである


陸惑星モデル


暴走温室効果(1)
  • 射出限界の存在には, 地面が湿っていることが重要な役割を果たしている


暴走温室効果(2)


水の量が多いと?


1 次元モデルのわな
  • 3 次元モデルではどうなる?


水が多い惑星の暴走温室効果(1)
  • 現在の地球の状態


水が多い惑星の暴走温室効果(2)
  • 太陽放射が増えると 1 次元モデルの予言した結果に近づく


水が少ない惑星の場合(1)
  • 乾燥した低緯度からは射出限界以上の惑星放射を出すことができる


水が少ない惑星の場合(2)
  • 平均して射出限界以上の入射があってバランスできる


実験概要


地面水量と相対放射
  • 横軸は現在の入射太陽放射に対する比(%), 縦軸は水の量(全球平均の深さ)
  • ある程度以上, 太陽放射を増やすと水は全部蒸発してしまう


地面水量と正味太陽放射
  • 横軸は現在の入射太陽放射, 縦軸は水の量(全球平均の深さ)
  • 415W/m2 以上太陽放射を増やすと水は全部蒸発してしまう
  • 射出限界は相対湿度が減ると大きくなる


地面水量と正味太陽放射
  • 横軸は現在の入射太陽放射, 縦軸は水の量(全球平均の深さ)
  • 415W/m2 以上太陽放射を増やすと水は全部蒸発してしまう
  • 射出限界は相対湿度が減ると大きくなる
  • 射出限界以上の太陽放射を与えても水が存在できる場合がある


積雪量と正味太陽放射


平均地表温度と正味太陽放射
  • 平均地表温度はそこそこ高い


東西平均した温度の緯度分布
  • 高緯度は 0-30 C の範囲にある


成層圏の水蒸気量(全球平均値)
  • 地表に水があるかぎり, 成層圏の水蒸気量は小さい
  • 成層圏の水蒸気量は低緯度の乾燥対流によって支配される


水の存続時間
  • 水惑星の場合, 射出限界を境に存続時間が激減する
  • 陸惑星だと宇宙年齢程度存在できる


完全凍結限界
  • 陸惑星は水惑星にくらべ凍りにくくなる
  • 0C を下回っても赤道付近は水がないので凍らない, たまに降雪するが日中の日射で融解する
  • 低緯度の降雪が日中に融解しなくなると全球凍結


まとめ


"Dune" 砂の惑星


陸惑星 vs 海惑星


6.1 自転軸傾斜


自転軸傾斜と日射量
  • 夏至の日射量


自転軸傾斜の大きな変動(火星)


火星と地球の違い
  • 月があるから


月の効果
  • 月のない地球の自転軸傾斜は 15-35 degree の間を変化, 周期も長い


4 つの気候モード
  • 自転軸の傾斜とハドレー循環の緯度幅との大小関係によって決まる





年平均降水分布(温暖モード)


降水分布
  • 直立している場合は高緯度でだけ降水がある
  • 傾斜している場合は低緯度でも降水がある


直立モードの循環


傾斜モード


直立モードと傾斜モード
ハドレーセルの幅との関係


直立モードの子午面循環
  • ハドレー循環によって低緯度の水は中高緯度へ輸送される. その結果, 低緯度は乾燥


傾斜モードの子午面循環
  • ハドレー循環によって高緯度の水は低緯度へ輸送される. 低緯度でも降水が起こる


自転周期を変えた場合(周期を長くした場合(1)


自転周期を変えた場合(周期を長くした場合)(1)
  • 左) 自転周期 1 日 右) 自転周期 10 日


自転周期を変えた場合(周期を長くした場合)(2)
  • 左) 自転周期 1 日 右) 自転周期 10 日


まとめ


自転軸傾斜と凍結限界
  • 傾斜モードでは低緯度から凍り始める
  • 傾斜モードは全球凍結しにくい, 直立モードの場合よりも南北熱輸送の効率がよくない


凍結における自転軸傾斜の影響


凍結条件とモード依存性(1)
自転周期を長くして比較
  • 左) 自転周期 1 日 右) 自転周期 10 日
  • 同じ日射を与えても, 自転周期のが長い直立モードの方が 高緯度の温度は低い


凍結条件とモード依存性(2)
自転周期を長くして比較


6.2 離心率


異形の惑星


軌道離心率の日射量への影響
  • 離心率が大きいと, 年平均日射量は増加, 日射の年変化が大きくなる


日射変化に対する惑星気候の応答(1)


日射変化に対する惑星気候の応答(2)


EBM 計算の結果
惑星放射の射出量は A+BT, 300 W で打ち切ることで射出限界を考慮する.
  • 4 つの気候状態が得られる
  • 年平均暴走温室と非全球凍結の境界が右曲がりになっているのは, 年平均日射量が増えるため


永久全球凍結モード


一次全球凍結モード
  • 夏の低緯度では, 氷がとけるくらいの温度になる


非全球凍結モード


年平均暴走温室モード
  • 温度は上昇を続ける


生命存在可能条件の定量化


生命存在可能軌道(1)


生命存在可能軌道(2)
熱容量を小さくした場合


生命存在可能軌道(3)
熱容量を大きくした場合


生命存在可能軌道(4)
熱容量を大きくし, 凍結状態を初期条件とした場合


非全球凍結解の軌道の例


暴走温室状態と蓄熱効果
  • 夏に暴走温室状態に入る, 海が蒸発し熱を蓄える
  • 冬の冷却は抑えられる


まとめ


6.4 内部の活動: 多重性と関連して


プレート運動による地球環境の安定化


二酸化炭素固定の問題
  • 陸惑星では炭酸塩形成による炭素固定の速度は非常に遅い, と考えられる(水が少ない, 暖かい場所では乾燥), 温暖化しやすい.


気候の多重性
  • 初期にどのような状態にあったかによって, 太陽放射の変化に対し異なる進化をたどる可能性がある.


多重性


まとめ(1)
  • 「地球みたいな惑星」で Habitable な条件を考えると, 間違えるかもしれない


まとめ(2)
  • 惑星テクトニクスの影響をよく考える必要がある
    • プレートテクトニクスは地球しかない
    • 表面に水があることがプレートテクトニクスの維持に重要かもしれない
    • 地球のような惑星に水をまいてもテクトニクスが違うと温暖化しない


ODAKA Masatsugu, SUGIYAMA Ko-ichoro & SASAKI Youhei 2006-07-27