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Habitable Planet の形成と進化 (3):
連続的生存可能条件

阿部 豊(東大・理)
2006 年 7 月 26 日
タイトルぺージ


惑星環境の変化要因
  • 太陽放射
  • 二酸化炭素量
  • 大気散逸


3.1 大気の保持と散逸


3.1.1 大気の保持
  • エスケープパラメータが小さいほど大気は逃げやすい


ポリトロープ大気
  • 等温または断熱的な大気のこと


球対称ポリトロープ大気の圧力, 温度, 密度分布
  • 静水圧方程式を解いて求める
  • 下付き添え字 0 は基準点での値を示す


ポリトロープ大気の構造
  • 重力エネルギー(黒)と いろいろなポリトロープ大気に対する熱運動のエネルギー(赤, 青)の分布
  • 基準点でのエスケープパラメタ < ポリトロープ指数
    λ < γ/(γ-1)
    • [熱運動のエネルギー] > [重力エネルギー]
    • 静水圧平衡が破れる条件
    • 等温大気は保持されない.


ハイドロダイナミックエスケープ
  • λ < γ/(γ-1) のとき, r → ∞ で圧力が有限値.
  • 大気上端で大気を重力で拘束することができないため, 大気が流出する
  • これはハイドロダイナミックエスケープと呼ばれる


大気を保持するための温度条件
  • 細い横線: 地球軌道における黒体の放射平衡温度
  • 太い横線: 惑星熱圏の温度(一声 1000℃ぐらい)
  • 曲線: 様々な成分の大気に対する λ = γ/(γ-1) の分布.
    • 曲線より上側の温度では大気は逃げてしまう.
  • 惑星質量(M)の大きさで, 大気が保持できるか判断
  • 地球型惑星の場合,
    • 大気が保持される条件: 250(放射平衡温度) - 1000 K(熱圏の特徴的温度)
  • 月サイズではすぐ(光化学的時間スケール)で散逸
  • 長期間保持できるのは火星サイズ以上


3.1.2 その他の散逸機構


Jeans エスケープ(1)
  • Maxwell 分布にしたがう速度分布をもつ大気分子
    • 一部の粒子は脱出速度を越えている
    • 高速な粒子が大気上端に存在すれば, 宇宙空間に散逸


Jeans エスケープ(2)


Jeans エスケープ(3)
  • 分子の数密度に比例する形になる


外圏からの Jeans エスケープ
  • 外圏の底における数密度を求め, その場合の Jeans エスケープフラックスを見積もる


Jeans escape flux


フラックスの最大値


Jeans エスケープフラックスと大気散逸の時間スケール
  • (左図)
    • 黒:エスケープフラックス(黒)
    • 赤: 黒の逆数から見積もった散逸時間スケール
    • 青: 地球の O, H, He のエスケープフラックス
  • (右): 左図の拡大図
  • 地球大気では H, H2は外圏ですぐに散逸
    • H は数時間
    • H2は十日程度


拡散フラックスの導出 (1)
外圏の底までの輸送として拡散輸送を考える
  • 軽い気体成分に関する量を添え字 1, 重い気体成分に関する量を添え字 2 として表す


拡散フラックスの導出 (2)


拡散フラックスの導出 (3)


拡散フラックスの上限
  • 濃度の鉛直勾配のない場合にフラックスは上限値
  • 乱流混合が活発に起こっていると思えば, 濃度勾配はほとんどないと考えてよい.


拡散フラックスの上限値と大気散逸の時間スケール
  • 左図:
    • H のモル分率が 10^-3 より大きいと, 1 海洋質量に相当する H が 1 億年程度で 拡散輸送
  • 右図
    • いろいろなエスケープパラメータについて
    • 黒: Jeans エスケープによる拡散フラックス
    • 赤: 1 海洋質量に相当する H が大気上層へ輸送される時間スケール


非熱的散逸の例
  • 電荷交換: 磁場の拘束をうけて運動していた荷電粒子が中性化して散逸
  • Solar-wind pick up を除き, 中性粒子の散逸機構
  • O, N の様な重い粒子を飛ばせる
    • 扱いが難しい ->個々のプロセスを考慮する必要あり.
    • 大雑把な一般論も存在しない


衝突散逸
  • 天体衝突による剥ぎ取り


衝突散逸のメカニズム
  1. 衝突のスケールがスケールハイトより小さい場合のメカニズム
  2. 衝突のスケールがスケールハイトより大きい場合のメカニズム


衝突散逸は起こるか?
  • 衝突天体によって持ち込まれる揮発性成分が無視できないので, 正味の散逸は小さい
  • なぜ衝突天体の揮発性成分は散逸しないのか? 衝突蒸気を構成する気体の全部が脱出速度を超えるわけではないから.


3.1.3 水の散逸


上層大気の水の量


上層大気の水の量(混合比)
  • 暴走温室になる前に, Diffusion Limit に達する


エネルギーできまる散逸の条件
  • 地球海洋質量の水を(今の10-100倍の)強い紫外線で散逸させるとしても, 10 億年くらいかかる
  • 上層大気に運べばよい, というわけではない.


酸素はどうするか
  • 上層に輸送され, 光分解された H2O から生じた O は?
  • O がたまってしまうと H と再結合し, H も散逸しにくくなる


水の散逸の過程
  • 海洋質量程度の水が散逸するために
    • Kasting の議論: 太陽放射が 110% ならば 45 億年
    • オゾンはどうするのか?
    • 阿部さんのモデルとKasting のモデルの違い
      • 成層圏界面の温度
      • Kasting: 200℃, 阿部さん: 150℃


中心星の進化


明るさの増大


太陽放射の増大の効果
  • 放射の増大に伴ない, 惑星は赤矢印の範囲を動く.
    • 火星は暖かくなり, 水が存在できる領域へ
    • 地球は水の存在領域にいる.
    • 金星は暴走温室効果が起こる -> 海が消滅


CO2 の固定


CO2 固定の効果
  • 分圧が減少する時間スケールが短かい
    • 中心星の明るさによる時間スケールに比して
    • 火星も全球凍結?


地球の場合
  • 炭素循環が存在するため凍らない


炭素循環モデルによる炭素量の変遷
Tajika & Matsui 1990 / Tajika 1992
  • 温度はほぼ一定,
  • 大気への脱ガス量と化学風化による炭素固定量がほぼつりあうような温度に


Tajika & Matsui 1990 / Tajika 1992 モデルにおける 炭素循環の定式化
  • 化学風化の時間スケールは 10-100 万年


Tajika & Matsui 1990 / Tajika 1992 モデルにおける 炭素循環の定式化: 時間スケール
  • 化学風化は遅い
  • 大気中の CO2 を入れ替えるのにかかる時間は 10^5-6 年


Tajika & Matsui 1990 / Tajika 1992 モデルにおける 炭素循環の定式化: 化学風化のない場合


大陸の影響
  • 大陸がないと温度は高くなる.
  • 途中で大陸を作ると, はじめから大陸を置いた場合と同様にふるまう. 10^5-6 年の時間スケールで遷移する.


安定化には惑星内部の活動が必要


Continuously Habitable Zone


ODAKA Masatsugu, SUGIYAMA Ko-ichiro, & SASAKI Youhei 2006-10-25